書籍 | 光学素子
商品コード:
9784902312379
光学素子と機構の検査技法 I
販売価格(税込):
15,400
円
ポイント:
154
Pt
井上 弘
B5判 222頁
2008/12/5
-光学材料・素子編-
オプトロニクス社
光学技術の習得/解析の書として座右にお勧め
本書のご紹介
光学技術や産業は、二十世紀前半の日本周辺に勃発した数多くの戦争と深い関係がある。日清戦争(1894-1895)、日露戦争(1904-1905)、第一次世界大戦(1914-1918)、満州事変(1931-1933)、日中戦争(1937-1945)、大東亜戦争(1941-1945)と続き、さらに朝鮮動乱(1950-1953)。光学機器は軍需品(双眼鏡、望遠鏡、潜望鏡、測量器、写真機、…)として当初は輸入に頼り、また英国の艦上測距儀を模倣してみたが性能は不良でしかなかった(1915/大正4)..
その後ドイツ技術者8名を迎えた(1921)が、3年後に2名(レンズ設計担当、製図担当)が死亡し、5名(機械技術・光学計算・曲面研磨2名・平面研磨担当)が帰国した。残る1名(製図担当)は7年間にわたり日本の技術者を育成してくれて、その後は軍需性を帯びながらも、光学産業が順調に拡大発展した。漸く平和を迎えた日本は、米国占領軍の規制下で米国軍需に輸出するようになった。
当時の光学企業では、光学設計室に大勢の女子社員が対数表を読んでレンズ設計主任を補助していた。次第にコンピュータの時代へと進む(1955-)。現在、光学産業の結成は百数十社以上になり、電子カメラが発売され(1976-)、レーザ光線を活用する新時代へと進展している。
しかし妙な状況に度々出会った。数個のレンズで構成された光線長をミラーでジグザクに折り畳んで、鏡筒が短縮でき且つ種々の光路長の機種を共通化できると、誇らしげに公表していたカタログを見た時だ。「光学素子の共軸性が保持されないよ」と注意したが無視された。一月後にそのカタログは見当たらくなった。
また、鏡筒の長さを統一できない企業では、20種類ほどの雑多な製品群になり、コストダウンに苦しんでいる。多数の企業で構成されている光学産業界の大多数は、製造の工程の一翼(開発・試作・組立)を担い自立心を養成してきたが、分業ネットワークはすっかり崩壊し、他見を受け入れない自尊心だけは堅過ぎる。高性能の軍用双眼鏡や写真機を製造していた中堅企業が、最近に倒産した事例もある。カメラの自動焦点技術に関して、著名な企業であろうとも、米国の特許所有権に精通できなくて14社が膨大な慰謝料を要求された特許紛争事件(1997)もある。
分業組織であろうとも全域を見渡し、知識を磨き知恵を駆使してゆく習慣が肝心である。光線束になった気持ちで本書を精読していただき、技術者の親身に役立つ事を期待しています。
(著者より)
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著者紹介
井上 弘
1932年(昭和7年)に東京市下谷区の出身。横浜国立大学機械工学科4年生のとき化学工学を専攻。南満州鉄道で多大な技術活躍をなされた教授から「ハンコを押すだけの仕事をしていた高地位の人は、第二次大戦の終結で帰国したとき何もできなくて生活に困窮していた。君達はまず技術を身に着けろ」と教諭され、教授が設計施工された東京駅前・丸の内ビルの冷暖房設備も見学した。
卒業後、私は帝国人造絹糸(株)(現:帝人)に就職。多島美の瀬戸内沿岸に、従業員1万4千人の事業所が3つ。先ず、20人の部下を指導して多数並んだ紡糸・糸巻上機の保全業務にあたる。春・秋には松竹歌劇団を招待し壇上の乱舞を、近隣の住民も混じえて歓迎する好景気でした。然し間もなく風邪を長引かせ長期の入院3年間。退院しても体調不十分の処、従業員9名の極小企業だが親切な社長に拾われ、重油・液化石油ガスの移充填装置を独りで設計し和歌山県の大きな石油プラントで施工を遂行。市場寡占率60%にもなった。この2社でそれぞれ第一種冷凍機械と乙種化学主任者の国家資格を取得して終止符とした。
マイナスからの再スタート。転職先は従業員1200名の中規模企業:富士写真光機(株)(現:富士フィルム)へ。以前とは真逆の社風・待遇だが、机面での仕事は体調回復に好適。初体験の光学技術を模索しながら設計業務に専念し、一方で計量士や技術士の国家資格も得た。定年退職後には光学ノウハウを著述し、国内外から光学知識の講義を依頼される。
目次
第1章 設計品質の検査
1.設計品質
2.設計品質の検査着眼点
3.品質欠陥の発生しやすい箇所
4.軸ずれ・軸倒れ
5.間隔ずれ
6.カム筒形式ズーム鏡筒の構成
7.反射・屈折面における光路
第2章 硝材の試験
1.硝材
2.板ガラス
◇型板ガラス
◇普通板ガラス
◇フロート板ガラス及び磨き板ガラス
◇板ガラスの試験方法
◇熱線吸収板ガラス
3.光学ガラス
◇硝種の表示
◇光学ガラスの性質
◇材料としての機械的性質
・弾性係数
・極限強さ
◇材質としての機械的性質
・硬度
・磨耗度
◇熱的性質
・比重・比熱
・温度と粘さ
・熱伝導
・熱膨張
・光路長の温度係数
◇光学的性質
・表面反射
・透過率
・着色度
・屈折率
・屈折率の測定方法
・屈折率の許容差
・屈折率の温度係数
・部分分散
・異常分散
・均質性
・ガラス内部の歪み
・脈理
・あわの検査
・異物
◇化学的性質
・耐水性(白やけ)
・耐酸性
・耐潜傷性
・耐候性
・ヘイズの測定
◇光学ガラスの物性一覧
第3章 光学プラスチック
1.光学プラスチックの材料
◇光学プラスチックの種類
◇プラスチック材料の略号
2.光学プラスチックの性質
◇光学プラスチック材料の特性
◇光学プラスチック材料の性質
3.光学プラスチックの屈折率
◇光学ガラスとの屈折率比較
◇屈折率と分子構造との関係
◇波長に対する屈折率の関係
4.プラスチックの吸湿性
◇吸湿度の変化
◇プラスチックの試験場所の標準状態
第4章 レンズ・ミラーの性質
1.レンズの公式
2.レンズの形状・大きさ
◇形状
◇レンズの厚さ
◇レンズの体積
3.特別な形状の単レンズ・ミラーの性質
◇レンズの性質
◇ミラーの性質
◇インミラーレンズの性質
第5章 レンズ・ミラー部品の検査
1.レンズ・ミラーの加工工程の概要
◇加工工程
◇加工方法
◇加工の事例
2.光学素子の取扱い注意事項
◇レンズ単品の保持(方法)
◇ハンド・クリームによる発錆傾向
◇レンズ単品の手入れ方法
◇レンズ単品の移動(方法)
◇レンズの鏡筒への組み込み(方法)
3.外観欠陥程度
◇レンズ・ミラーの外観欠陥程度の検査
◇外観検査の要領
◇検査項目………表面の欠陥
◇表面欠陥の大きさの表現
◇表面仕上げに関する規格
4.寸法の測定
◇測定の概念
◇外形寸法の測定
◇レンズ・ミラーの外形寸法の測定
◇レンズの中心厚の測定
・ミクロテスタを使用する方法
・電気マイクロメータ JIS B 7536
・レーザスケールの構造
・レーザリニアの構造
・エヤマイクロメータを使用する方法
・超音波を利用する方法
◇レンズのサジッタ(深さ)の測定
◇寸法測定器の選択
◇面取の測定
5.表面の測定
◇曲率半径の測定
・測定方法
・接触子方法による曲率半径の測定
・リングスフェロメータ(絶対値測定)方法による測定
・リングスフェロメータ(比較測定)方法による測定
・フーコー・ナイフ・エッジ方法による測定
・顕微鏡系オートコリメータ方法による測定
・望遠鏡系オートコリメータ方法による測定
・モアレトポグラフィ方法による測定
・モアレ縞の発生
・ニュートンゲージによる測定
・フィゾー型干渉計を用いた測定方法
◇ニュートンリングと面の性状
・面の球面性状(質;凹凸方向)の判定
・面の球面形状(パターン)の判定
・面の球面収差(球面度;ニュートン)の判定
・面の偏曲(非球面度;アス)の判定
・面の歪曲(クセ)の判定
・面の粗さ(リップル)の判定
◇ニュートンゲージ
・ニュートンゲージの体系
・ニュートンゲージの種類
◇平面度の測定
・平面度の表示
・平面度測定方法の種類
◇表面粗さ計の方式の比較
◇平面度検査の実際
・干渉方法による面精度の測定
・望遠系オートコリメーション方法による測定
・測定事例
・オプチカルフラット方法とオートコリメータ方法との比較
◇平面度によるミラーの特性
◇レンズとミラーとの形状・姿勢誤差の比較
◇非球面形状の測定
6.偏心の測定
◇心精度(光軸の幾何偏差)
◇位置・角度偏差の測定と表示方法
・測定方法
・偏心の決め方と表示方法
◇偏心の測定方法
・触針方法によるレンズ偏心の測定
・反射式オートコリメーション方法によるレンズ偏心の測定
・コリメータ透過方法によるレンズの偏心測定
・共役像透過方法によるレンズの偏心測定
◇トランケートレンズの光軸傾きの測定
◇偏心の許容公差
7.円柱面の測定
◇シリンドリカルミラーの光軸ずれの測定
◇シリンドリカルミラーの母線のうねりの測定
◇ホログラフィック素子を用いた干渉測定
8.コート膜特性の測定
◇測光
◇コート膜
◇反射防止
◇反射率の測定
◇透過率
◇コート膜の欠陥
◇密着力の試験
◇硬さ(耐磨耗性)の試験
◇耐熱性の試験
◇耐寒性の試験
◇耐湿性の試験
◇耐塩水性の試験
◇耐薬品性の試験
9.異物質の検査
◇散乱光を利用した検査
◇偏光を利用した検査
10.接合レンズの試験
◇接合
◇外観の品質要件
◇接合強度の品質要件
◇接合強度の信頼性試験(温度-相対湿度)
第6章 プリズムの検査
1.プリズムの種類
◇プリズムの種類
◇プリズムの機能
2.プリズムの性質
◇展開図
◇プリズム面の屈折作用
・屈折による偏角
・最小偏角
・プリズムの倍率
◇反射による偏角
・頂角と偏角
・光路長
・全反射
3.プリズムの検査
◇屈折率の測定
◇面精度の測定
◇面の角度の測定
・頂角の精度
・外面角度による測定方法
・内部角度による測定方法
・戻り光を観測する方法
・光学ゲージと比較する方法
・干渉縞を観察する方法
・目視による簡便な方法
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